第20章 柱稽古とお館様
しかし片腕を通したところで動きを止めた。
いつも思い立ったらすぐ行動に移していたが、今は夜であり昼間の稽古で疲れ果てた剣士たちが多く眠っているので、このまま勢い良く飛び出せば起こしてしまう可能性が高い。
「皆さんを起こしてはいけませんよね。先に少し様子を確認しましょう、鬼は出ないと言われていますが自分の行動で万が一予期せぬ出来事が起こってもいけませんし」
1度更紗は気持ちを落ち着けるために深呼吸を行い、隊服から手を抜き出して浴衣を着直す。
そして忍び足で部屋から廊下へ身を滑らせ物音を立てないよう細心の注意を払いながら玄関へとソロソロと移動していくが、やはり屋敷内は静まり返っており、たまに剣士の誰かの寝言が聞こえてくるだけだ。
(滝行も岩を押すのも体への負担が大きいですもんね。勢い良く部屋を出なくてよかったです……)
危うく剣士たちを強制的に起こしひんしゅくを買う行動を起こそうとしていた自分に反省していると、目的の場所である玄関へと到着した。
すりガラスがはめ込まれた木の引き戸の向こう側はこちらと同様静まり返っているようだが、用心のために耳をガラスに当てて外の様子を伺う。