第20章 柱稽古とお館様
「音はしないけど……なんでしょう。少し嫌な感じが……するようなしないような」
とてつもなく曖昧な感覚だが、人間の危機察知能力は馬鹿に出来ない。
特に更紗のように日々危険に晒されている人間は、本能的に危険を遠ざける為に感覚が研ぎ澄まされることがあるのだ。
「少し戸から離れた方が良さそう……」
初めは何となくだったが、時間が経つにつれて更紗の中に得体の知れない恐怖が広がっていく。
自分の本能的感覚に従って戸に体を向けたまま後退り、大きめの下駄箱の隙間に体をねじ込んで外から姿を認識されないよう、慎重に戸の向こうを覗き込んだ。
(気のせい?それならそれでいいのですが……え?小さな影が戸に近付いて来ているような……?!)
初めは鼠かと思ったが、それは大きな間違いだった。
すりガラス越しに見えた小さな物体は丸くて白い色をしていた。
それが屋敷の中を確認するように戸に張り付いてきたのだ。
更紗は小さく縮こませていた体を更に縮こませ、震える体を自身の腕でかき抱いて外に気配を感じ取られぬよう小さく静かに息を吐く。
(あれは目……でした。目が独りでに歩き出すなんてありえない。また鬼の分身?血鬼術?私や禰豆子さんを探してるの?それとも鬼殺隊全体の動きを把握しようとしてる?)