第20章 柱稽古とお館様
更紗本人もどういった原理で透けて見えるのかはっきりと分かっていない。
前に刀鍛冶の里で鬼の分身と対峙した際に、失敗の許されない状況下で何の前触れもなく見えた世界だ。
こうして落ち着いた状態で見えたとしても、闘いの場で同じように出来る保証はない。
「そのようなことが起こり得るのか……何にせよお館様へはお伝えしていた方がよさそうだな。明朝、私からお伝えしておこう。月神も疲れているなら今日はもう休んで構わない。突然呼び立てて悪かったな」
確かに稽古で疲れてはいるが、風呂に入らせてもらい夕餉もしっかり食べた更紗はまだまだ元気だ。
体を気遣い立ち上がって道場の入口へ体を向けた行冥の腕を両手で掴んで引き止める。
「お館様へのご連絡はお任せ致します!ですが私はまだ元気ですよ!お力になれるかは分かりませんが、赫刀のことをお伝えするくらいなら出来ます!悲鳴嶼様の聞きたいことは何だったのでしょうか?」
見た目に削ぐわぬ怪力に行冥は僅かに目を見開くが、更紗の善意を無駄にすることが憚られ体を更紗へと向き直らせた。
「すまないな。では私に見せて欲しいのだ、赫刀と言うものを。私は目が見えぬが様々なことを感じ取ることが出来る。月神に見せてもらい感覚を掴めることが出来れば或いは……と思ったのだ」