第20章 柱稽古とお館様
「悲鳴嶼様!申し訳ございません!自分の世界に入り浸っておりまして……すみません」
まさかそこまで自分が集中しているとは思わなかった更紗は、結果的に行冥を待たせてしまったことに謝罪した。
「いや、私が声を掛けることを敢えてしなかったのだ。謝罪は必要ない。それよりも月神からただならぬ空気が漂っていたが、何をしていた?」
さすがは鬼殺隊最強を謳われる行冥、更紗がただ集中し自分の存在にすら気付かなかったのではないと瞬時に理解している。
だが、こんな子供の戯言のような事を話して信じてもらえるのか更紗は不安になった。
人体が透き通って見えるなど普通の人間が聞いたら笑って一蹴して終わってしまうからだ。
眉を下げて口を噤む更紗に行冥は安心させるように目元と口元を和らげ、穏やかな口調で促してくれる。
「月神の言う言葉を私は笑わない。何をしていたのか話してくれるか?」
初めて見る優しい行冥の表情に緊張や不安から強ばっていた気持ちと体が一気に解れ、更紗は意を決して先ほどの様子を伝え始めた。
「前にも見えたのですが、集中力がある一定を超えると人体が透けて見えるのです。筋肉や骨……それが皮膚を通り越して見え、次の動きが予測出来る……ように思います。意識してした事がないので明確ではないのですが」