第20章 柱稽古とお館様
呟きながら隊服の袖を捲りあげて自分の腕を確認するも、やはりどう考えても行冥の太腕には敵わない。
それに杏寿郎から聞いた情報によると、行冥は特殊な日輪刀を使用しており杏寿郎はもちろん、杏寿郎より腕力のある天元でさえも扱うことが出来ないほど重いものらしい。
(それでも日輪刀を持参して来るように……と指示を出されたのは私の日輪刀を見るためでしょうか?うーん……考えても分からないのでお経を唱えて待とうかな)
心の中でお経を唱え始め心を無にすると不思議と気持ちが落ち着き、全身を巡る血液や力を感じ取ることが出来た。
徐々にその感覚が明確になっていき、いつの日か透き通る世界が見えた時と同じ状態に近付いていく。
(あと少し……あと少しで前のように透き通って見えそうです。自分の体も透き通って見えるのでしょうか?)
ふと閉じていた瞼を開け正座している足の上に置いている手に視線を落とすと、完全ではないが薄らと筋肉や骨が透けているように映った。
(これは一体なんなのでしょう?杏寿郎君に聞いておけばよかったです)
別れ際に聞きそびれてしまったことを後悔しながらため息をついたところで、雑念に覆われた更紗から透き通る世界は遠ざかっていった。
首を傾げながら足を崩して楽な姿勢にしようかなと考え何気なく顔を上げると、目の前に行冥が静かに腰を下ろしていて更紗は腰を抜かしかけた。