第20章 柱稽古とお館様
頬を赤らめふわりと笑う更紗に苦笑いを浮かべると、実弥は杏寿郎と稽古を始める為にその場から離れ木刀を抜き取った。
「更紗は俺と不死川の精神安定剤だな!さて、激しい打ち合いが予想されるので少し下がって見学していなさい。終わったら今までどのような稽古をしてきたのか教えてくれ」
そう言って杏寿郎は実弥から更紗を隠すように背を向けて立つと、額に唇を落とし満面の笑みで身を翻して木刀を抜きながら実弥の方へと歩いていった。
「……顔がにやけてしまいます!ダメダメ……貴重な柱同士の稽古をしっかり目に焼き付けなくては!炎と風……私と棗姉ちゃんと同じです。ちょっとしんみりしちゃいますね」
目の前にいるのは更紗や棗と対象的な体格の柱2人。
腕や足は誰もが安心感を持つことが出来るほどに鍛えられており、今までの並々ならぬ努力が垣間見えた。
しんみりしたり感心したりしている間に2人は準備を整え終えたようで、闘気が瞬く間に練り上げられていき、杏寿郎に至ってはくっきりと左頬から額にかけて鮮やかな痣が浮かび上がる。
「綺麗な痣……って言ってる場合ではないです!もう少し離れなくては間違いなく吹き飛ばされます」
いそいそと杏寿郎の忠告をしっかり守り後ろへ後退ると同時に、ついに2人の稽古が始まった。