第20章 柱稽古とお館様
「おい……いつまで拗ねてんだァ?」
「拗ねてません!」
「……拗ねてんだろ」
「拗ねてません!」
このやり取りを杏寿郎は間に挟まれて何度聞かされたことか……
初めは笑顔で2人の様子を眺めていたが、屋敷から柱同士が稽古をする場まで移動する間も、こうして稽古場に到着している現在も繰り広げているので苦笑へと変化してしまった。
「更紗がこうも頑なになるのも珍しいな!気持ちは分かるが、そろそろ許してやってはくれないか?恥ずかしかったかもしれんが、それだけではなかっただろう?」
少しむくれていた更紗だったが、思い返してみると確かに実弥の脅しで得られたものも大きい。
あれがなければ剣士たちと気まずい雰囲気のままだったかもしれないと思うと、悲しい気持ちより感謝の気持ちが勝ってくる。
「はい!実弥さん、ずっと拗ねていてすみませんでした。よく考えると実弥さんのお陰様で皆さんと仲良くなれたように思います!ありがとうございます!」
杏寿郎の言葉1つでむくれ顔から笑顔になった更紗を半目で見つめながら、実弥はいつもより乱雑に頭を撫でた。
「やっぱ拗ねてたんじゃねぇかァ。ったく、煉獄はお前の精神安定剤かよ……まぁ、いいわ。おい!早速始めんぞ!」