第20章 柱稽古とお館様
コソコソと剣士内で密談が始まった。
そうして押し問答を繰り返した末、剣士たちの輪から弾き出されたのは更紗の胸ぐらを掴んだ剣士だった。
しかも弾き出された勢いそのままに地面に手の平と額を擦り付けて、所謂土下座を見事な姿勢で行った。
「い、いきなり何でしょう?!早く顔を上げてください!でないと……」
「生意気言ってすみませんでした!どうか頭蓋に踵落としだけは勘弁してください!」
杏寿郎や実弥にこの現場を見られては勘違いされるとキョロキョロしていた更紗は、剣士の言葉に完全に動きを止めたかと思うと、ボンッと音が鳴るのではと心配になるほど急激に顔が茹で蛸色となった。
「それは……実弥さんから?」
「あ、はい。何でも盾突く奴は片っ端から頭蓋が陥没するほど踵落としをくらわすと聞きましたが」
脅すにしても他にもあっただろうに、よりにもよって1度だけ当主の鬼にくらわした踵落としを引き合いに出されるとは夢にも思っていなかった更紗は、ついにしゃがみこんで顔を両手で隠してしまった。
「人にしたことはありません……1度だけ下弦の鬼にしただけです。皆さんには私がそんなに凶暴に映っているのでしょうか?」