第20章 柱稽古とお館様
『月神さん!ありがとうございました!』
そして一斉に頭を下げられる。
一般剣士が一般剣士である自分に頭を下げる光景はやはり異様で、更紗は顔を真っ赤にして首を左右に振った。
「い、いえ!どちらかと言いますと私がお礼を述べなくてはいけない立場ですので……あの、もしかして実弥さんに何か言われましたか?私としましては普通に接してくださる方が嬉しいのですが」
剣士たちは更紗の真っ赤に染まった顔に戸惑い顔を見合せた後、1人がおずおずと口を開いた。
「実は既に寿命を縮められていると不死川さんから聞きました。それでも俺たちを助けるために尽力してる月神さんと同じことをお前らなら出来るのか?と問われました。誰も……即答出来なかったんです」
更紗は生まれ持った使い慣れた力を使っているので、実のところあまり深く考えてはおらず、自分に出来ることをしているだけの感覚だ。
それに命を掛けているのは剣士たちも同じなので、自分だけ特別頑張っているという考えには至らなかったが……それにしてもこの怯え方は異常である。
「皆さんとしている事は大差ないですよ。それより、なぜ私に怯えているのですか?先ほども特に変なことを言った心当たりはないのに……」