第20章 柱稽古とお館様
それから暫くして予定通り実弥が稽古場に剣士たちを置き去りにして、怒り心頭で屋敷へと帰ってきた。
ひとまずご機嫌斜めの実弥の対応は杏寿郎に任せ、更紗は稽古場へと急ぎ……この屋敷に来て2度目となる目の前の惨状に顔を引きつらせた。
「杏寿郎君の言葉をお借りすると……えげつないですね。皆さん、お疲れ様です!そのまま楽にしていてください」
息も絶え絶えだった剣士たちは更紗の姿を確認すると、なぜか礼儀正しく一斉に正座をして背筋をピンと伸ばした。
「え、怯えられてる……?と、とりあえず傷を」
予備動作は何もなかった。
気が付けば剣士たち1人1人を個別に包み込むように綺麗な粒子がフワフワと舞い、瞬く間に傷が癒えていく。
「終了です!でも私の力は傷を癒すだけで、疲労や汚れは取れませんのでお風呂に浸かってしっかり体を休めてくださいね。ご協力ありがとうございました!あ、これから柱同士の稽古があるようなので、興味がありましたら一緒に見学させていただきましょう、では失礼します」
目の前の異様な剣士たちの姿に居心地が悪くなった更紗は一刻も早くこの場を離れようと踵を返すが、一斉に立ち上がる音に驚いて振り向いてしまった。