第20章 柱稽古とお館様
杏寿郎の声を耳にした更紗は心の中で感謝を告げ、立ち上がって剣士の前へと歩み寄り顔を見上げた。
「どんな言葉をお返ししても言い訳にしかなりませんが……私は私の力に目をつけた鬼舞辻無惨に狙われています。私を食べれば鬼の弱点である陽の光を克服出来る可能性があるからです」
鬼舞辻に捕まったとして鬼にされて利用されるか人のまま喰われるか……どちらにしても鬼殺隊にとって不利な状況に傾くのは間違いない。
それを何となく剣士も理解出来たが、1度出してしまった怒りはなかなかおさまってくれず、更紗を睨みたくもないのに睨みつけてしまう。
「1度鬼舞辻無惨に刃を振るいましたが、全く歯が立ちませんでした……私が共に剣士の方々と任務に赴くと二次被害が想定され、柱の方々の総意を押し切ってでも赴くことに二の足を踏んでいました。もっと強くなれていればと悔やんでも悔やみきれません……あなたの大切な仲間を助けることが叶わず、申し訳ございませんでした」
押し倒された際に出来た手の擦り傷が痛むが、それよりも更紗の胸の中が締め付けられるように傷んだ。
大切な人を目の前で亡くす辛さを知っているので、それにより傷付いた剣士に対して今は謝罪し頭を下げるしか出来ない。