第20章 柱稽古とお館様
「謝るなよ……俺だって八つ当たりだって分かってんだ!何で言い返さねぇんだよ……腹立たねぇのかよ」
「腹を立てる理由がありません。事情がどうであれ、あなたが言った言葉は紛れもない事実です。私には謝罪をして、先の闘いに備え頭を下げることしか出来ないのが心苦しいです」
こうして面と向かって言われ、自分がいかに弱く多くの人を助けられなかったのかを実感し無力感に苛まれるが、それで終わらせてはいけない。
過去はどれだけ後悔しても、どう足掻いても変えられない。
それならば先で救えるかもしれない命を救うことに力を注がなくては、浮かばれるものも浮かばれなくなってしまう。
未だに頭を上げようとしない更紗に剣士が戸惑い、どうしたものかと悩み始めた。
しかしそうさせたのは自分なので、どんな言葉を掛ければいいのか分からず呆然としている。
「頭を上げなさい。全てではないかもしれないが、君の想いは届いたはず。後は俺たちで対処するので待機しているんだ」
温かい手が背に当てられ、優しい声を向けられた更紗は緩む涙腺を必死に抑え、顔を上げて杏寿郎を見つめる。
「結局手をお借りすることになり……申し訳ございません」
「謝る必要はない。君が出た時点である程度予測していたことだ。それに俺たち柱の仕事をあまり取られてはこちらとしても困るからな!」