第20章 柱稽古とお館様
「俺が呆れてんのは人前で堂々と女を抱き締めてるてめぇにだァ、煉獄。チッ、にしてもうっせぇなァ……俺が黙らせる間にそいつの顔色戻しとけよォ、治癒能力を向上させるついでに、こいつらの怪我治してもらうからなァ!」
こちらに歩み寄ってきていた実弥は剣士たちへと向き直り、相変わらずの怒号を響かせている。
その間に杏寿郎は更紗を解放して顔色を確認すると、いつも通り赤く染っており思わず頬が緩んだ。
「どうやら不死川は俺に呆れていたようだ!よもやよもやだな!ところで体に不調はきたしていないか?治癒は続けられそうか?」
更紗は熱くなった顔をパタパタと手で扇ぎ熱を冷ましつつ、笑顔から心配げな色を浮かばせた杏寿郎へと笑顔で大きく頷いた。
「元はと言えば私が原因なので実弥さんは私にも呆れているかと……体調は問題ありませんし、治癒も続けられます。蓄積される速度が日に日に速くなっているので、有り余ってる状態です」
最後の言葉に杏寿郎は顔をしかめそうになるが、すんでのところで思い留まった。
(鬼狩りが終わりを迎えた暁に、この子の増え続ける力をどうするかなど……心配事を増やしてやるのは酷だな)