第20章 柱稽古とお館様
暫くの沈黙に更紗が首を傾げたので、杏寿郎は目を細めて微笑み頭をそっと撫でた。
「それならいい。決して無茶はせんようにな。さて、剣士たちに君の能力を説明してくるので待っていなさい」
表情を引き締めて剣士たちの元へと足を向ける杏寿郎の羽織を握り、その動きを止めさせた。
更紗に向けられた僅かにいつもより開かれた瞳は、なぜと問いかけている。
「説明……私にさせていただけませんか?」
「……それをする理由はなんだ?更紗の能力に関することは我々柱に責任を任されたはずだぞ」
最もな杏寿郎の意見に言葉が詰まったが、小芭内に守られこの場でも杏寿郎や実弥に守られるわけにはいかないと、どうにか声を絞り出した。
「しかし私が隠し通すと自分自身で決めて今に至ります。柱の方々だけでなく私にも責任を任されているはずです」
この瞳を杏寿郎は何度も目の当たりにしてきた。
決めたことをやりとげようとしている、強い意志のこもった瞳。
そしてこの時の更紗は中々引かない頑固者になるということも知っている。
「君が説明したとして……いや、なんでもない。更紗の思うようにやってみなさい。だが何か起これば俺たちが前に出るぞ」