第20章 柱稽古とお館様
「私はお優しい実弥さんが好きなので、一刻も早くいつも通りに戻っていただけるよう尽力致しますが……お手柔らかにお願いします」
言われた通りに持てる力の全てを体に発現させて木刀を片手で地面と平行に構え、地面に両足をめり込ませてから飛び上がったかと思うと、瞬きする間に実弥へと一気に詰め寄った。
天元に鍛えてもらった持久力と自然治癒能力。
蜜璃に優しく覚え込ませてもらったしなやかな身のこなし。
小芭内に叩き込まれた流れるような関節の動き。
そして日々杏寿郎から教え込んでもらっている体術や技の数々。
それら全てを出し惜しむことなく活用し、実弥が構える木刀へ上下左右から自分の持つ木刀を叩き込む。
更紗自身予測していたことなので驚きも何もしなかったが、実弥はそれらを余すことなく受けては流し、反撃を繰り出してきた。
「そうでなくっちゃなァ!煉獄に柱として通用するくらい力付けて貰ってんだ、もっと全力で打ってこいやァ!」
「え?!どうしてそれをご存知……杏寿郎君、実弥さんにお話ししたのですか?!」
焦る更紗に穏やかな笑みが返される。
「話したとて問題ないことだからな。全力の不死川に全力で向かっていきなさい」
知らぬ間に漏らされていた情報により、実弥から一切の手加減をしてもらうことは叶わなくなっていた……初めから。