第20章 柱稽古とお館様
項垂れたまま辿り着いた稽古場は死屍累々。
生ける屍となった剣士たちが至る所に転がされていた。
ここで鬼の襲撃でもあったのかと疑いたくなるほどの惨状に、更に更紗の気持ちは沈んでいく。
「えげつないな!更紗と手合わせする前に、剣士たちを運んでやらなくてはならないぞ?」
早速剣士たちを運んでやろうと踏み出した杏寿郎を、実弥は片手で制して大きく息を吸い込んだ。
「てめぇらァ!いつまでぶっ倒れてんだァ?!とっとと退かねぇと、もっぺん打ちのめすぞォ!」
辺り一帯に響き渡る怒号に気絶していたはずの剣士たちは一斉に起き上がり、蜘蛛の子を散らすように稽古場の隅へと避難した。
どうやら気絶したフリをしていただけだったらしい。
「てめぇらいい根性してんじゃねぇかァ……覚えとけよ。こいつとの打ち合いが終わったら、その根性を買って血反吐吐くまで稽古付けてやるからよォ!……おい、更紗もいつまでも項垂れてねぇで木刀構えろ、見ての通り俺はさっきより機嫌が悪ぃんだ」
これでは憂さ晴らしに八つ当たりで、更紗にとっては踏んだり蹴ったりな状況だ。
だがこれ以上項垂れていても状況は好転するどころか悪化するだけだと悟り、諦めて木刀を腰から抜き取った。