第20章 柱稽古とお館様
「え?!杏寿郎君ではなく私ですか?!それは私には荷が重いのではないでしょうか?!」
まるで生贄のように差し出された更紗は異議を申し立て1歩後ろへ後退るが、今度は実弥の手が更紗の肩へ置かれ、逃げられないように掴まれてしまった。
「そりゃあいい考えだ。逃がさねぇぞ、俺の憂さ晴らしに付き合えやァ」
笑顔が黒い。
しかも稽古のはずなのに、はっきりと憂さ晴らしだと告げた。
とんでもない所に放り込まれてしまった更紗は、放り込んだ張本人へ助けを求めるように視線を向けたが、笑顔で頭をポフッと優しく叩かれ見放された。
「君なら大丈夫だ!臆することはない、鍛えられた成果を存分に発揮して不死川の気持ちを鎮めてこい!」
「そんな!だってこんなに怒っていらっしゃる実弥さんのお相手など」
「観念して俺の相手しろや!持てる力全てを使ってなァ!」
もう誰も頼れない。
更紗はシュンと項垂れて、2人に促されるまま稽古場へと重い足を動かした。
唯一の救いは持てる力全てを使えること……つまり無尽蔵に動けるよう力を巡らせても良いということだけ。
それでも今の実弥相手にどこまで通用するのか不明である。