第20章 柱稽古とお館様
「ん?柱稽古と言っても一般剣士の鍛錬をするだけではないからな!俺たちもそれぞれ力を付けるために柱同士で技を高め合うのだ。言っただろう?君を待ってやるつもりはないと」
確かに言われたが柱同士でも鍛錬をするとは聞いていない。
だが杏寿郎の言う通り、一般剣士を強くするならば柱はより強くなる必要があるわけで……納得せざるを得ない。
そんな話をポカンと聞いていた更紗だったが、やはり杏寿郎を前にすると嬉しさを隠せず頬が薄紅色に染まって顔が綻んだ。
「そうだったのですね。杏寿郎君とまさかお会い出来ると思っていなかったので、驚きましたがすごく嬉しいです!私は今から実弥さんのお屋敷へ向かう途中です。杏寿郎君はどなたの元へ向かうのですか?」
嬉しさを前面に出す更紗に目尻を下げた杏寿郎は、木刀に当てられたままの手を取って引き寄せる。
「更紗と同じだ……そう言えば君は前に俺の匂いが落ち着くと言っていたな。覚えているか?」
至近距離で見つめられながら自分が言った言葉を繰り返され、嬉しさから染まっていた頬が恥ずかしさで真っ赤に染まった。
もちろん数日前に言った言葉であり嘘偽りのない言葉だったので忘れるはずもない。