第20章 柱稽古とお館様
小芭内へ深く頭を下げた後、力の向上に協力してくれた剣士たち全員を見回して再び深く頭を下げた。
「今までお力になれず申し訳ございませんでした。これから先の闘いでは今まで救えなかった仲間たちの分も、この能力で皆さんを守らせてください。必ず……生きてまた会いましょう」
何かを堪えるように小刻みに震える体はずっと腰が折られており、小芭内からも剣士たちからも表情を伺うことは叶わない。
ただ分かるのは涙を零してはいないということだけ。
「もういい、顔を上げろ。月神1人に全て背負わせるために俺やこいつらが協力したわけじゃない。君が出来ることをするのと同じく、俺たちも俺たちが出来ることで先の闘いに備えているだけだ。いつまでもここで油を売ってないで先へ進め」
相変わらずぶっきらぼうで口を挟む隙もない話し方だが、周りの空気が柔らかくなったのを更紗は確かに感じ取った。
もしかすると剣士たちへの態度も軟化するのではと思え、上げた顔は笑顔で綻んでいる。
「はい!伊黒様、大変お世話になりました!皆さん、共に稽古頑張りましょうね!ではお先に失礼致します!」
笑顔を残して背を向けた更紗を剣士たちはホワホワとした気持ちで見送ったが、それはすぐにぶち壊されることとなった。
「さて、貴様らは月神の力の恩恵を受けることが叶わなくなったわけだが……これがどういう意味か分かるな?」
剣士たちへの態度は軟化するどころか、さらに厳しくなることが予想される。