第20章 柱稽古とお館様
自炊するなら好きに使っていいと伝えていた食材が、これから先のことも考えて丁寧に分けられている。
それを行ったうえで山盛りの握り飯と焼き魚、味噌汁を作り終えているので、小芭内は目を丸くした後に柔らかく細めた。
「俺の分も作ってくれたのか……助かる。だが、奴らを甘やかす必要はない。昼と晩は奴らに作らせろ。月神が飯作りを負担して縛り付けられたら元も子もない。君は他の奴らより多く得なければならないものもあるだろ」
口調は淡々としているが、小芭内なりの気遣いに更紗の頬が緩んだ。
「ありがとうございます。では昼餉のみ他の方にお任せして、夕餉は一緒に作らせていただこうと思います。それなら稽古も疎かになりませんから。あ、そうだ!実は関節の動きで聞きたいことがございまして……皆さんが起きてこられるまでに伺ってもよろしいですか?」
「君は意外と頑固だな……まぁ稽古や力の制御が疎かにならないなら好きにすればいい。で、聞きたいことは何だ?」
居間へ促され、更紗は作った朝餉を運びながら小芭内に一太刀浴びせるために質問をいくつか投げかけた。
それらの答えをもらい、更紗が小芭内へ一太刀あびせ隊服の釦を弾け飛ばせたのは次の日の昼を過ぎた頃だった。