第20章 柱稽古とお館様
どうにか治癒が間に合い剣士の怪我を防げたことに内心でホッと息をつくが、悠長にここで立ち尽くしているわけにもいかない。
既に目の前には木刀を容赦なく仕掛けてくる小芭内が迫っているからだ。
相変わらず太刀筋はうねっており、更紗の攻撃を通してはくれない。
「月神いちいちそいつらに謝罪していくつもりか?今の君の太刀筋だと永遠に謝罪を口にしなくてはいけなくなる、そこに体力を使うなら少しでも早く俺の言ったことを理解して、自分の望んだことをやり遂げて次へ進め」
初めからずっとだが、助言や目標を掲げ示してくれるので更紗にとってはすごくやりやすい。
その時々で今しなくてはいけないことを混乱せずに思い出させてもらえる。
「でなければ君をそいつらと同じく縛り付けなくてはいけなくなる」
その言葉に一瞬動揺した更紗の隙をつき、鳩尾に強烈な一撃が叩き込まれた。
嫌がおうにも涙が浮かび胃の中の物がせり上がってくるが、それをどうにか押し戻し小芭内の関節の動きを見極めようと、ふらつく足を死ぬ気で動かし腕を振り上げる。
「ゴホッ!縛り付けられるわけにはいきません……」
これ以上杏寿郎の顔に泥を塗るまいと小芭内に言われたことを試み、どうにかこの日は縛り付けられることなく終わりを迎えた。