第20章 柱稽古とお館様
「やはりな……不思議だと思わなかったのか?自分が生きていたことに。思っていたよな?その疑問に今答えてやる、貴様の命を繋ぎ止めたのは今こうして俺の木刀を受け止めている月神だ。感謝こそすれ悪意を月神に向けようものなら、今度こそ貴様の命はないと思え!」
悪意も何も向けていないのに……むしろ向けるつもりもないのに、突然白羽の矢を立てられ怒鳴られ脅された剣士は横向きに縛られたまま涙をドバドバ流し、再び何度も頷くしか出来ないでいる。
「そんな無茶苦茶な!ですが……ありがとうございます」
苦しそうな表情ながら僅かに更紗が笑顔を覗かせると、小芭内の表情も一瞬和らいだが……本当に一瞬だった。
「この状態で笑えるとは偉く余裕があるな!」
木刀を一気に薙ぎ払われたのを確認した頃には、更紗の体は後ろへ弾き飛ばされていた。
このままでは間違いなく更紗の後ろで目を見開き、首を左右に振っている剣士への衝突は免れない。
「ごめんなさい!」
先にこのままの勢いでぶつかる事への謝罪を行い、寸前で力を解放して剣士の周りに粒子を感覚で纏わせた。
「ぐふっ……ん?……んんーー?」
更紗がぶつかって来た衝撃はもちろんあったが、先の言葉の通り痛みは感じず、剣士はモゴモゴと口許の布を動かしながら首を傾げる。