第20章 柱稽古とお館様
「何を考えている?自己犠牲が必ずしも美徳とは限らないぞ!」
「……自己犠牲のつもりはありません。私の力のことは私が責任を持ちたいだけです!」
身体能力が上がっているはずなのに、先ほどから小芭内の木刀を押し返せない。
それどころか更紗の木刀は徐々に押され、鋭く瞳を細めた小芭内の顔が近付いてくる。
「その心意気は褒めてやるが、月神の治癒能力を隠すことはお館様や俺たち柱全員が決めたこと、つまり鬼殺隊の意志そのものだ。それに異議を申し立てる奴がいれば、永遠にここに縛り付けたままにしてやる」
何が何だか剣士たちは分からないが、口を布で塞がれ意思疎通出来なくても全員の意思は1つとなった。
『絶対異議を申し立てない』
そんな空気を感じ取っているのかいないのか……懸命に木刀を押し返そうとしている更紗へ言葉を続ける。
「それに那田蜘蛛山で死にかけていた奴らを月神は多く助けた。この中にも思い当たる奴が数人いるはずだ、俺の右斜め後ろのお前!自分が那田蜘蛛山で死にかけていたこと覚えているな?」
右斜め後ろといっても所狭しと括り付けられているので該当者は数人いるが、その中の1人が小刻みに震えながら何度も頷いた。