第20章 柱稽古とお館様
(動きが速すぎて上手く見えない……なら、することは一つだけです!)
うねる小芭内の木刀や所狭しと括り付けられている剣士の間をくぐり抜け、瞬時に痣を色濃く浮かび上がらせるが……剣士たちの瞳に強く恐怖の色も同時に色濃く浮かび上がってしまった。
「当てないように気をつけます!……当たってしまったら痛みを感じる前に治癒を試みますのでご容赦ください」
更紗の言葉に、今度は剣士たちの瞳に疑問が浮かび上がった。
剣士たちは更紗の特異能力を知らない。
今まで厳重に治癒出来る力を隠されていたからだ。
だが最終決戦が近付いていると推測された今、多くの命を救うために出し惜しみなどしていられない。
本部で研究をしているしのぶから剣士たちの前で力を使う許可が出た時点で、本部……つまりお館様からの許可が出たという事だ。
それを杏寿郎や実弥、小芭内も理解している。
(今まで隠していたことに対して反感を買うかもしれないけど……私に向けられるだけなら耐えられます!)
悲しい決意を灯し向かってくる更紗に小芭内は眉をひそめて真っ向から迎え撃ち、弾くことなく痣によって遥かに強くなった一太刀を受け止めた。