第20章 柱稽古とお館様
折れかけた心を奮い立たせ、もう一度小芭内へ剣士の解放を願い出てみた。
「伊黒様の仰る通りなのですが、剣士の方々の心の声が聞こえてきていたたまれない気持ちになるような」
「戦場ではこれより酷い光景を目にするが?月神の精神を鍛えるためにもやはりちょうどいいな。早く木刀を構えろ、君があの杭に括り付けられない事を祈っている」
駄目だった。
助けることは叶わず、このまま訓練が開始されることになってしまった。
心の中で剣士たちに罪悪感を感じながら、既に木刀を構えている小芭内に倣い自分も腰から木刀を抜き出して向かい合う。
「伊黒様、よろしくお願いいたします!」
そう言って剣士が括り付けられた杭の向こう側にいる小芭内へ詰め寄り木刀を横に薙ぐが、さすがは柱である。
僅かに足を後ろへずらすだけで更紗の初撃を躱し、杭の合間を縫って反撃を繰り出してきた。
「な?!」
(木刀なのに太刀筋がうねってます!どうやって……)
「考える暇があるなら見て覚えろ。俺の手首や腕、足の関節の動きはどうなっている?君のように固定されているか?」
攻撃をいなしながら、小芭内の丁寧な説明を実際に理解しようと関節の動きを観察する。