第20章 柱稽古とお館様
(環境に甘えていたのですね……蜜璃ちゃんの訓練で気付かせてもらえてよかった)
心の声が止まると同時に蓄音機から流れていた音楽も止まった。
朝から音楽に合わせて踊り続けていたため、汗が全身から流れ息も上がっている。
「更紗ちゃん!ちゃんと合ってたよ!よく頑張ったね、私の訓練は今日この時を持って終わりだよ」
「ありがとうございます!それもこれも蜜璃ちゃんや皆さんが辛抱強く励まして下さったお陰様です!もう感謝してもしきれません!」
喜びを満面の笑みと弾ませた体で示す更紗の周りには人の輪が完成しており、見るも無残だった更紗の成長を万歳三唱で共に喜んでくれている。
「ところで今日はどうするの?ここに泊まっていってもいいんだけど、急いでるのよね?煉獄さんに期限を決められてるって言ってたし」
「着替えて伊黒様のお屋敷へ向かおうと思います。ここで8日間もお世話になり、急がなくては期限に間に合わなくなってしまいますので……本当に長い期間ありがとうございました」
ペコッと頭を下げると、しんみりした空気が漂った。
出来の悪かった子を全員で励ますことで、一体感が生まれていたのかもしれない。
更紗も8日間を共にした蜜璃や剣士たちと別れるのは寂しく感じたが、期限内に全ての稽古を終わらせるため全員に感謝を述べてから、その日のうちに甘露寺邸を後にした。