第20章 柱稽古とお館様
次の日から地獄の柔軟は踊る前に体を解す為だけのものとなった。
更紗に必要なのは柔軟ではなく、何かに合わせて体を動かすことだと蜜璃が判断したからだ。
つまり蜜璃の訓練はしなやかな体作りと、共闘する際に相手の動きや出す音を察知し上手く連携を取れるようにするもの。
音感は相変わらず向上しなかったが、それを理解すると徐々に感覚が掴めてきた。
理解する時に思い浮かべたのは鈴取り合戦で見せられた、杏寿郎と義勇の見事な更紗への連携攻撃だった。
互いが互いの動きを読み、間髪なく詰まることなく流れるように交互に繰り出される技の数々。
根本的な動きそのものが違う炎と水の呼吸にも関わらず、相手の攻撃を一切邪魔せず更紗へと、それぞれが強烈な技を見舞ってきていた。
(今まで私は誰かに合わせてもらっていたから共闘が成り立っていただけ。杏寿郎君や棗姉ちゃん、炭治郎さんたち……皆さんが私の動きを察知して立ち回ってくれていた。だから私は何かに合わせて動くのが苦手だったんですね)
自身の過去の行動を省みてよく分かった。
どれだけ自分が恵まれた環境にいて、優しい多くの人たちに助けられていたかを。