第20章 柱稽古とお館様
昨日の夜は蜜璃の自室に呼んでもらい歌を教えてもらって一緒に歌ったのだが、これがなんともいい具合に見事に音を外す。
今まで歌を歌ったり聞いたりする習慣がなかったのも関係するかもしれないが、もうこれは持って生まれたものなのでどうしようもない。
「更紗ちゃん、大丈夫よ!もう一度同じ曲で練習しましょ!皆の言う通り日に日に良くなってるから、あとは反復練習あるのみだよ」
床に両手を着いて愕然としている更紗へ、眩いばかりのキラキラした笑顔を蜜璃が向けてくれる。
5日目でもどうにか正気を保っていられるのは、剣士たちの励ましと蜜璃の可愛いらしい笑顔の存在が大きい。
「はい!苦手だからと諦めてはいけませんよね!もう一度よろしくお願いいたします!」
苦手な事を苦手のまま終わらせる事を杏寿郎も許しはしなかった。
玖ノ型を撃てるようになるまで、血反吐を吐きながら来る日も来る日も反復して体に叩き込まれたのだ。
努力が結果として必ず報われるとは限らないが、小さなことでも積み重なれば大きな力となる。
そう気合いを入れ直した更紗へ、蜜璃から魅力的なご褒美が掲示される。
「今日も訓練が終わったら皆でパンケーキ食べようね!」
俄然やる気の出てきた更紗は、日が暮れるまで永遠と踊り続けた。