第20章 柱稽古とお館様
屋敷を出発して5日が経過した。
その間にしのぶを始めとして実弥や小芭内へと連絡を入れ、全員から快諾して貰えて喜んでいられたのも束の間。
更紗は完全に打ちのめされ、共に訓練を行っている剣士たちから慰められ続けること3日目となる。
次は小芭内の稽古場にと当初は考えていたのだが、突然協力を願ってその日のうちに世話になるのは気が引けて、考えた末に蜜璃の屋敷に向かうことにしたのだ。
剣士たちが地獄の柔軟と呼ぶ力技の柔軟は更紗にとって何の苦痛も伴わなかったが、その後に行われる音楽に合わせて体を動かす訓練が更紗を悩ませている。
「そんな落ち込むなよ、誰だって苦手なものの一つや二つあるって」
「初日よりだいぶ良くなってるよ!頑張ろう!」
こうして今日も全員が揃いのピッタリとした衣装を着用させられながら、更紗へと優しい言葉を掛けてくれる。
「こんなにも音感がないとは思ってもみませんでした……皆さんは凄いですね。私は感覚を覚えて体を動かしているので、違う曲になると手足が迷子になります」
音楽的才能が皆無。
蜜璃の屋敷へとやって来て生まれて初めて実感させられた現実だった。