第19章 音柱と美しき鬼
「……杏寿郎君から許可が出れば手を貸していただけますか?」
しのぶと珠世は困ったように顔を見合せ、1度目を伏せてからもう一度更紗へと向き直る。
「更紗ちゃんは剣士です。闘いながら治癒を施すなんて心身共に負担が大きいのではないですか?戦力になり得る貴女が治癒で闘いに支障をきたすようではいけませんよ。まぁ、煉獄さんならそこらへんも踏まえて判断されるでしょうが」
「あまりお勧めしませんが、私は戦闘に関してそれほど詳しくないので鬼殺隊の判断に委ねます」
全ては杏寿郎に託された。
今頃屋敷で悪寒に襲われているに違いない。
それを全く想像していない更紗は決意を灯した表情で拳を胸の前で握り締めた。
「明日、直接お話ししてまいります。負傷者が多く出る場なら、実弥さんや伊黒様の柱稽古はうってつけですし。許可を頂きましたら神久夜さんにこちらへ足を運んでいただくようにしますので、どうか栄養剤を研究の1つに加えてください」
深く頭を下げられてしまっては断れない。
それに戦場で傷付いた剣士が再び闘いに戻れるなら、鬼殺隊としては願ってもないことである。
杏寿郎の許可さえおりれば断る理由がないので、危篤な杏寿郎に思いを馳せながらも更紗の願いを受け入れ、この日は解散となった。