第19章 音柱と美しき鬼
花街で天元の怪我を治した時のように落ち着いて治癒出来るのならば経口摂取でも問題ないが、常に動き回っている状況が想定される戦場では蓋を開け閉めして口へと運ぶ時間が取れない可能性が高くなる。
「出来るなら中に薬が入っていて、すぐに使用可能なものがいいのですが……」
「「出来ますよ」」
更紗の要望は呆気なく受諾された。
あまりの呆気なさにポカンとしている更紗に、2人は満面の笑みを向ける。
「それなら時間をかけずにすぐに完成します。珠世さん、せっかくなのでその注射器を改良して……」
「そうですね。肌に押し当てると針が出るように……」
やはり更紗を置いてけぼりに2人の会話は進む。
注射器の簡単な構造は分かるが、それを改良して更に薬の成分を……など専門的な会話となると人並み程度の知識しかない更紗はついていけなくなってしまう。
しかし実際に使うのは自分なので、ついていけないなりに使用方法がどのようなものなのかだけでも理解しようと、取り敢えず要点だけを頭の中に叩き込むために会話をしっかり聞いている。
(……お2人の知識とこの注射器ならもう1つお願いしても大丈夫かもしれません)