第19章 音柱と美しき鬼
「ここでは何ですから中に入りましょう。そこで詳しくお話しします」
そう言ってしのぶは2人を中へと促し、適当な椅子を見繕って全員が腰を下ろしたところで詳しく更紗の能力の詳しい内容の説明を行った。
糧が必要なことや血を使用した治癒のこと、糧がなくなった時にどのような代償があるのか。
痣の副作用を抑える性質があったため、柱稽古が始まった今出来る限り多く製作しなくてはいけないことなど、四半刻ほど本人を置いてきぼりに2人は質疑応答を繰り返した。
「つまり既に剣士たちの怪我を瞬時に治療出来る薬は完成しているのですね。その分、鬼舞辻を追い詰めるための毒や薬を作る時間にさけるのは助かります。更紗さんは何か要望はありませんか?力の提供を行ってくださるのですから、何か要望があればお伺いしますよ」
そろそろ更紗の思考能力が危うくなり始めた頃、珠世が要望はないかと聞いてきてくれた。
最終的には自分のためになるものなので、今までしのぶに願ってはいなかったのだが、上弦の鬼と闘う中で欲しいと思っていたものが2つある。
「あります。1つは戦場で血を媒介とした治癒を行う際に、素早く造血薬を摂取出来るよう、経口摂取ではなく注射器で直接体内に入れられるようにしていただきたいと考えていました」