第19章 音柱と美しき鬼
初対面の女性に向かって言える言葉ではないので言葉は慎み、代わりにニコリと笑顔を向けた。
「ご存知だとは思いますが、私の体内の小さな損傷は即座に修復されますので本当に大丈夫です。痛みも目眩もすっかりよくなりました!しのぶさん、珠世様、私の不注意でお時間を取らせてしまい申し訳ございませんでした」
しゃがみ込んだまま頭を下げる更紗にしのぶは苦笑しながら、立ち上がりやすいように手を差し伸べた。
「いえいえ、覗き込む姿が可愛らしくて注意を怠った私にも原因がありますから。珠世さん、本人から自己紹介がありましたが、この子が更紗ちゃんです。見ての通り不思議な力が備わっていて、今では切断された肉体も再生出来るようになりました」
そこまで詳しく聞かされていなかったのか、珠世は床に膝を着いたまま絶句している。
本人は鬼なのでどのような体の損傷もすぐに完治するが、それと同じことが出来る人間がいる事実に驚きを隠せないのだろう。
「そのような事が出来るのですか?しかし、それ程の事を成し遂げようとするならば何か代償が必要なのでは?」
さすが頭脳明晰なだけはある。
単純に凄いと驚くだけでなく、その裏を読んで的確な解釈を投げかけてきた。