第4章 鍛錬と最終選別
杏寿郎は呼吸で心拍数を抑え顔の赤みを消す事に集中していたが、そう質問された更紗に視線を向けてしまった。
本当にただの気の迷いで見てしまったが目が離せなくなった。
天元からの質問の答えを本人の顔を見て本人の口から聞きたくて。
「はい!杏寿郎さんのお姫様になれたら、すごく嬉しいです」
満面の笑みで杏寿郎を見つめて本当に言うものだから呼吸なんてすっかり忘れてしまった。
からかってやろうと天元は杏寿郎の顔を覗き込むも、その表情を見てそんな気は吹っ飛んでしまった。
千寿郎なんかは兄の顔をこれ以上見れないと俯いてしまった。
「あ、なんか悪ぃ……もうこの話題やめとくわ」
天元がそう言うほどの表情を杏寿郎は右腕で隠し小さく呟いた。
「本当に…… 更紗、もう勘弁してくれ……!!」
泣く子も黙る柱。
一般剣士から尊敬される鬼殺隊の先導者。
鬼が恐れる炎柱 煉獄杏寿郎。
柱の中でも腕相撲では上から3番目の怪力の男は、細腕の無邪気な16歳の少女、更紗に完敗した。
きっとこれからも勝てる事は無いだろう。