第19章 音柱と美しき鬼
更紗の瞳に映った女性は息を呑むほど美しく、才色兼備や眉目秀麗といった言葉がぴったりだった。
そんな女性、珠世も初めこそ驚いていたが、更紗がしゃがみこみ額を押さえる姿を見て、自分が開いた扉がそうさせたのだと気付き慌てて床に膝を付いて更紗と目線を合わせた。
「謝罪するのはこちらの方です!人の気配がしたので思わず何も考えないで開けてしまいました。はじめまして、私は珠世と申します。それより額の手当をしなくては」
「いえ!私が覗き込もうなんて真似をしなければ何も起きなかったのですよ!えっと、これくらいならすぐに治せますので治療は必要ございません……ほら!元通りです!」
フワフワと額に粒子を纏わせると、瞬き1つもしない時間で額に出来ていたコブは治まっていた。
その様子に珠世は再び目を丸くして驚いたが、先にしのぶから更紗の力の説明を受けていたのか、すぐに真剣な表情となりコブが出来ていた額に手を触れた。
「本当にすぐに治ってしまうのですね。ですが、脳に衝撃があったのですから念の為横になった方がいいのでは……」
心配そうに眉を下げる珠世は、やはり瞳の瞳孔や牙から鬼に違いないが、その表情は慈愛に満ちており人よりも人らしいと更紗は心の中で思った。