第19章 音柱と美しき鬼
まさかの本部呼び出しにその場で立ち止まって背筋をピンと伸ばすが、しのぶが待っていると聞き僅かに緊張を解いてホッと息をつく。
こんな急に紹介したい人がいるとなると、恐らく先に控えている研究に携わる人なんだろうなとは予想出来るが、研究を共に行う時でも問題なさそうなのにと首を傾げた。
「何が何だかな状態ですが本部へ向かいましょう。でも、私は1人で本部へ行ったことがないので道が分かりません。神久夜さん、ご案内いただけますか?」
本部の所在地を柱たちは知っているようだが、一般剣士である更紗は知らされていない。
1人では辿り着くことが出来ないので、頻繁に本部へ出入りしている神久夜だけが頼りとなる。
それを当然理解している神久夜はコクリと頭を上下に動かして了承の意を示す。
「ハイ!少し距離がアリマスノデ、夕刻マデに着クヨウ急ぎマショウ。夜の1人歩キは危ないデスカラ」
今日も気遣いばっちりな神久夜の頭を一撫でして、更紗は3日前より軽くなった体を動かした。
一瞬力を使おうかと迷ったが、これも稽古の1部だと言い聞かせて天元のしごきで得られた持久力のみで。
こうして1人と1羽は本部へ向けて出発したが、目的の場所へと辿り着いたのは日が沈むギリギリの時間だった。