第19章 音柱と美しき鬼
天元たちは更紗の姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。
炭治郎たちは見送ると言ってくれたが、それよりも走れと天元に言われてしまい、泣く泣く訓練へと戻って行った。
何度か振り返り天元たちに手を振りつつ走っていると、いつの間にか辺りに見知った人は居なくなり、まばらに近くの村の人が歩いているだけとなる。
「次は伊黒様のお屋敷に向かってその次は無一郎さん、悲鳴嶼様に……まだまだ先は長そうです……それにしても、神久夜さんまだ本部から帰ってこない……急な呼び出しなんて今までなかったのに……」
今日の明朝、本部の鎹烏に呼び出された神久夜は産屋敷邸へと旅立ってしまっていた。
また何か知らず知らずのうちにやらかしたのでは……と記憶を探るが特に思い当たらない。
それでも不安は拭えず1人悶々と考えていると、その不安を解消してくれる神久夜が更紗の肩へとゆっくり舞い降りてきた。
「お疲れ様です、神久夜さん。もしや私のせいで怒られたり注意を受けたりしていません……よね?」
突然なんの心当たりもないことを問われた神久夜は頭を傾げるが、更紗を安心させるように頬に頭を擦り寄せる。
「大丈夫デス。お叱リも注意も受けてオリマセン。タダ、今から本部へ向カウことにナリマシタ。私モ詳しくは分カリマセンガ、紹介シタイ方ガいるとの事デス。蟲柱様ガお待チシテオリマス」