第19章 音柱と美しき鬼
「敢えて言うならば調子が良すぎるのが異常になるのかもしれませんが、喜ばしいことなのでご心配には及びません。いつも気にかけてくださってありがとうございます」
ペコッと頭を下げると、馴染みのある大きな手がワシャワシャと頭を撫でた。
「心配すんのは当たり前だろ?元気なら俺らはそれでいい」
手が離れ更紗が顔を上げると、いつも通りニカッと笑う天元と寄り添うように微笑む嫁たちの優しい笑顔があった。
次に会えるのはいつになるか分からない。
考えたくもないが、これが最後になるかもしれないと思うと胸の中にチクリとした痛みが走り顔を歪めそうになるも、それを悟られないよう笑みで顔を満たす。
「はい!ではそろそろ次の稽古に向かいます。3日間、お世話になりました。行ってまいります」
元気に走り去る後ろ姿が4人には少し寂しそうに映り、顔を見合わせると天元が口を開いた。
「必ず帰ってこいよ!んで、帰ったら全員で祝勝会だ!」
何から……など聞かなくても分かる。
次に会えるとすれば鬼舞辻との闘いを終えたあと。
溢れそうになる涙を堪え、もう一度必死に笑顔を貼り付け振り返って手を振った。
「必ず!祝勝会楽しみにしております!」