第19章 音柱と美しき鬼
杏寿郎が余すことなく大量の握り飯とおかずを食べ終えて2日経った昼間、更紗はどうにか天元から課された訓練の基準を満たし、皆より一足先に宇髄邸を後にしようとしていた。
「天元君、奥様方、ありがとうございました。お陰様で持久力と自己修復能力が格段に上昇しました!まさか自己修復能力まで上がるとは思わず……なんと感謝を申し上げればよろしいやら」
元々更紗の体は人並外れた自己修復能力が備わっている。
体内の軽い損傷や疲労ならば本人が感じる暇もなく勝手に修復されるので、人よりも体が柔軟で疲れにくい。
それを力を使って故意的に上昇させ無尽蔵に動かせる体を作っていたが、稽古では力の使用を禁止されていたので本来持ち合わせている力のみで挑んだ結果、力がそれに対応するように上昇したようだ。
「まさか3日目でどっちも上がるとは俺も思ってなかった……姫さんの体がどんどん超人の域に達しようとしてて、正直派手に心配だ。本当に体に異常はねぇんだな?」
更紗は自分の全身を見回し、体内の様子も探ってみるが異常など感じとれず、なんなら稽古を始める前より体が軽くなって調子はすこぶるいい。