第19章 音柱と美しき鬼
更紗がいそいそと天元の鈴を付けている姿を見て、それならば自分の鈴もと思い至ったに違いないと確信した天元は半目になったが、対抗心を燃やす姿を想像するとすぐに笑顔になった。
「相変わらず仲が良くていいこった!っと、そろそろ姫さんも飯食わねぇと休憩終わっちまうぞ。特に姫さんは腹空かせてちゃ何が起こるか分かんねぇ体なんだ、しっかり食って少しでも休憩してろ」
「はい、ありがとうございます!では失礼させていただきます」
ふわりと笑顔を残して更紗は地面に転がる剣士の間を縫って炭治郎たちの元へと歩いて行った。
その動きに合わせて涼し気な鈴の音が響き、天元からすればまるで猫が機嫌良く歩くような音に聞こえた。
「気まぐれじゃねぇけど、目を離すといつの間にかいなくなるところは猫っぽいか?……それより今日の昼からのしごき、継子組は山越えさせっかなぁ!余裕の稽古じゃ意味ねぇし。なら早速道を分かりやすくしといてやるか」
その場から瞬き1つで姿を消した天元は、継子たちに更なる試練を与えるために山の中へと姿をくらましていった。
握り飯に夢中の更紗たちはまだ気付いていないが、昼から特別訓練を強制的に行われることとなる。