第19章 音柱と美しき鬼
山を麓から頂上、頂上から麓を繰り返し走ること5回。
さすがの更紗も汗が滲み息が上がってきた。
既に太陽は真上に移動しており、そろそろ食事をいただかないと空腹で倒れてしまう。
弾んだ息を整えながら5回目になる天元の前を通り過ぎようとすると、幸運にも休憩の声が掛けられた。
辺りは生ける屍と化した剣士たちが所狭しと地面と仲良ししている。
「お前ら情けねぇなぁ!女の前で根性すら見せれねぇのかよ!ま、とりあえず飯にすんぞ!有難く思え、俺の嫁たちが丹精込めて作った握り飯が山ほどある。昼からのしごきに備えて食っとけよ!食欲無いからって食わねぇと後悔することになるからな」
更紗や炭治郎たち継子は息を切らせているものの食欲はあるようで、ワラワラと天元の前に並び目を輝かせている。
「お前らは普段からしごかれてる分、派手に余裕ありそうだな!よしよし、たらふく食え!んで昼からもその調子で頑張れよ!」
渡された握り飯を手に各々地面に座って口へ運んでいくが、更紗は天元の前から動かずじっと天元を見つめている。
「ん?食わねぇのか?」
「いえ、いただくのですが……油虫の大群を思い出しまして。あれは私でも全身が泡立ちました」