第19章 音柱と美しき鬼
山の中は当然様々な障害物がある。
地面には倒れた木やどこから出てきたのだと思う大きな岩、更に石や枝などが転がっており足場が非常に悪い。
それに加え、高さはあまりないとはいえ山は山、ご丁寧にも道順を示す看板は山頂へと続いており、上へと登るにつれて空気が薄くなる。
「それだけならまだしも罠が至る所に……ひぎっ!」
という具合に自然の障害物以外にも天元特製の罠が所狭しと張り巡らされている。
罠にかかっても命に関わるものは今のところなさそうだが、上から砂が降ってきたり虫が飛んできたり……とりあえず精神に揺さぶりをかけられるのだ。
「虫を選ぶにしても油虫はないと思います……」
基本的に虫も平気な更紗だが、大量の油虫が上から物凄い勢いで向かってきた時は、後先の体力を考える余裕もなく全速力でその場を走り去った。
今も剣士の誰かが罠にかかったようで悲痛な叫びが山に木霊している。
「ある意味では鬼より怖いかもしれませんね……あ、落とし穴」
誰かが落ちたであろう落とし穴をピョンと飛び越えたが、中にはまだ哀れな剣士が取り残されていたので、踵を返して中の様子を伺う。
「あの、大丈夫ですか?よろしければ手をお貸しします」