第19章 音柱と美しき鬼
溌剌とした笑顔で杏寿郎に見送られた更紗たち一行は、第一の稽古場である天元の家の前へと到着した。
懐かしいと4人は言いたいところだが、つい先日世話になったばかりなのでどちらかといえば「ただいま」な気分である。
そんな天元の屋敷の裏から怒号が聞こえてくるものだから、ガクガク震えながらどうしようかと門の前で思案している。
「どうしましょう?裏……行ってみますか?荷物だけ門の中にいれさせていただいて」
「う、うん。基礎鍛錬みたいだし、荷物さえ置けば」
『地面舐めてんな!なんでそんな体力ないの?!おら!もう1周走ってこい!』
炭治郎の声をかき消すほどの天元の声は4人を更に震え上がらせた。
すでに善逸は逃げ出しそうで伊之助によって襟元を掴まれているが……逃げ出すわけにはいかないので、全員が荷物を門の中に失礼させてもらい裏へと急いだ。
「おう!やっと来たか!早速だが姫さんらも羽織脱いで走れ!山の中を派手に障害物避けながらな!急げ、時間は待ってくれねぇぞ!」
竹刀を片手に声を張り上げる天元に促され、弾かれたように全員が羽織を脱ぎ……羽織を脱ぐ必要のない伊之助は先に山の中へと消えていった。