第4章 鍛錬と最終選別
「更紗さん、僕は姫さんと言う呼ばれ方、更紗さんにピッタリだと思います。なんだか可憐だけど、凛としてる雰囲気とよくあっていると思うんです」
天元と違い、からかいの全く含まれない言葉に更紗は先程までの恥ずかしさが一気に込み上げてきたように、顔が真っ赤になった。
「い、いえ。そんなに私はいいものではないですよ。でも、杏寿郎さんにとってのお姫様になれるのならば、それはすごく嬉しいです」
純粋に思った事を言っているだけなので、打算や計算のない言葉だ。
おそらく幼子が両親に『お姫さまみたいに可愛い』と言われて、喜ぶようなものなのだろう。
だが天元に姫さんと言われて特に喜んだりしていなかったのに、杏寿郎のお姫様になれたら嬉しいと言ったということは、少なからず杏寿郎にどんな形であれ、周りの人間よりも好意を抱いているということだろう。
千寿郎はパァッと明るい表情になり、思わず杏寿郎に顔を向ける。
しっかり更紗の言葉が聞こえていたのだろう、隣りに座っている天元にも、前の席に座っている千寿郎と更紗にも顔を見られないように壁を見つめている。
顔と耳を真っ赤にして。