第19章 音柱と美しき鬼
「それも稽古の一貫だ。しっかり考え自分に合った順番で回りなさい。明日は竈門少年たちと共に向かい、そこからは1人1人柱から合格を貰える速度が違うので離れ離れになるが……移動の際はくれぐれも気をつけるようにな」
胡座をかいている足をポンと叩き片方の手を広げると、更紗は悩むのを中断して頬を赤らめ笑みを浮かべながら、嬉しそうに近寄ってきて杏寿郎の足の中へすっぽりおさまった。
「こうしていただくの、なんだかお久しぶりで少し恥ずかしいですね」
その言葉通り杏寿郎の胸元に預けられた更紗の背中はいつもより体温が高くなっており、鼓動も感じ取れるくらい強く速くなっている。
「最近は様々なことが立て続けに起こり、あまり時間が取れなかったからな。明日からは互いに忙しくなるので、こうして2人の時間を過ごせるのは随分先になりそうだ」
更紗は後ろから回された腕にそっと手を添え、肩口に寄せられた杏寿郎の顔に自分の頬を擦り寄せて気持ちよさげに目を細めた。
「はい。再び会えるのも早くて一月後ですし、特に夜は杏寿郎君が恋しくなっちゃいそう……ねぇ、杏寿郎君」
「ん?どうした?」
自分から呼びかけたにもかかわらず、更紗は更に体温を上げて体を縮こまらせながらモジモジ動き言い淀んでいる。