第18章 閑話休題
紗那が更紗から体を離すと、涼平もそばへと移動してきていたのが目に映った。
2人とも、悲しげに瞳を揺らせている。
「正直に申しますと、私が戦場に赴いて棗姉ちゃんと同じにならないとは言えません。村に帰れば私の命は助かりますが、もし杏寿郎君が……大切な人たちが帰ってこなかったらと思うと連れ帰られても抜け出す自信しかありません!」
まさかの脱走宣言に傍らに立つ杏寿郎は目を剥き、涼平や槇寿郎、千寿郎はぽかんと口を半開きにし、体を震わせていたはずの紗那と成り行きを見守っていた天元は吹き出した。
「抜け出すって……フフッ!さすがお母さんの娘ね!私が更紗ちゃんと同じ立場なら、同じことを考えて同じことをしていると思うわ。でもね、私はあなたの母親だからやっぱり手放しで見送ることは出来ない……ただあなたの人生だもの、あなたが後悔しない道を応援するよ」
優しく更紗の頬に触れる手はやはり小さく震えており、断腸の思いでの決断なのだと身に染みて実感した。
「僕は今すぐにでも連れ帰りたいけどね。だけど、何も知らなかった子をここまで育ててくれた杏寿郎君や鬼殺隊に関わる方々の想いを無碍にしたくないし、信じたいとも思ってる。更紗、お父さんとお母さんは力になってあげられないけど、待っているから行っておいで」