第18章 閑話休題
「私にとって1番大きかった出来事は棗姉ちゃんのことです。覚えてますか?桐島棗さん、村で行方不明とされている女の子です」
「もちろん覚えているわ。ご両親が山の中で鬼に襲われて……娘さんである棗ちゃんだけが行方知れずで。棗ちゃんがどうかしたの?」
キョトンとする紗那とは裏腹に、未だに更紗の心は棗を思い出すと胸の傷がジクジクと痛みを伴う。
「うん、棗姉ちゃんは鬼殺隊にいたの。偶然1度だけ一緒に任務に行ったんだけどね……次に救援要請で向かった任務先では言葉を交わすことすら出来なかったんです。つまり……私が任務先で目にしたのは棗姉ちゃんの亡骸だったの」
例の屋敷でのことも伝えようかと思ったが、誘拐された先での話しを両親が聞いたとして、すんなり受け入れられることではないと判断し、棗のことを話した。
1番影響を与えられたのは間違いなかったからだ。
その棗の話しは容赦なく更紗の涙腺を刺激するが、今は泣くより先に伝えなくてはいけない。
「その時、辛くて悲しくてどうしたらいいか分からなくなったんです。でもそれと同時に、こんな想いは二度としたくない、誰にもさせたくないって思いました。例えば私が戦場に赴かなかったとして、杏寿郎君や柱の方々、鬼殺隊の剣士が亡くなってしまったら私は間違いなく後悔して自分を許せなくなります」