第18章 閑話休題
いつまでもべそをかくほど時間もないので、更紗は杏寿郎の首元から腕を離し隊服の袖で涙を拭って杏寿郎に笑顔を見せた。
「泣いてばかりもいられませんね!今からこの試合の結果を踏まえて説得しなければなりませんし」
「そうだな!ご両親からすれば間違いなく心苦しいだろうが、柱からすれば君の戦力や力は欠かしたくない」
飽くまで柱としての意見だ。
個人的な意見は更紗の両親と同じく、杏寿郎とて命の危険が今までの任務とは比べ物にならないほど高い戦場になど更紗を連れて行きたくはない。
それでも両親を更紗と共に説得するのは柱として…… 更紗の意見を尊重するためだ。
そんなことを心の中で考えていると、突然更紗の姿が何かで覆い隠された。
「更紗ちゃんの力は認める。ただあと1つ聞かせて?どうしてそこまで力を付けて鬼と闘うの?貴女に何があったの?」
更紗を覆い隠したもの、それは厳しい目で更紗の力を見極めようとしていた紗那だった。
声や体が震えており、涙をこらえているのが一目で分かる。
それが更紗の心を締めつけるが、更紗にも譲れない信念や想いがあるので、残酷かもしれないと思いながらも戦場に赴きたい気持ちを伝えた。