第18章 閑話休題
『私は……闘いたい!杏寿郎君や皆が危険なところに行くのに、1人安全な所でじっとなんてしたくない!もう離れたくないよ!』
もうどうすればいいのか涼平は分からなくなっていた。
娘の命を第一に考えるならば連れ帰るのが正解だろう。
だがそれをしてしまうと更紗が今まで必死の想いで積み上げてきたものを無碍にしてしまう。
「どうすれば……僕はどうすればいいんだ」
崩れ落ちそうな涼平の肩に力強い手が掛けられた。
「どちらが正解なんてありません。親として我が子を戦場に行かせたくないと思うのは当たり前の感情です。私も息子を失うのは怖い……ですが煉獄家は代々鬼狩りを生業として生きたので、こういう事態は想定済みです。しかしあなた方はそうではない」
静かに語られる槇寿郎の言葉に耳を傾けていたが、それを途切れさせるように甲高い音が辺りに鳴り響き、離れまいと強く抱きしめ合う2人の姿が目に入った。
「杏寿郎君のそばで闘うことをあの子は何より望んでる。あんな2人の姿を見せられて、私はとてもじゃないけど引き剥がせないわ。それともあなたは馬に蹴られて死にたいのかしら?」
「…… 更紗の子供を見るまで死ぬわけにはいかないよ。そうか……あの子はもう僕たちが導いてやらなければならない子供じゃないんだね。本当に……親の気も知らず勝手に成長してしまうんだから」
小さな呟きだが、確かに更紗の願いを認める言葉だった。