第18章 閑話休題
激突した2人の炎は行き場を失い空高く噴き上がる。
もちろん2人はそんなことお構い無しに噴き上がった炎の中、互いが互いを打ち負かそうと打っては返しを目にも止まらぬ速さで繰り広げていた。
「私は……闘いたい!杏寿郎君や皆が危険なところに行くのに、1人安全な所でじっとなんてしたくない!もう離れたくないよ!」
涙がポロポロと更紗の瞳から零れ落ちる。
もちろん両親のことは大好きで心配をかけたいなんて思っていない。
しかし何度も強制的に杏寿郎や大切な人のそばから引き離され、更紗は悲しくて辛くて怖かった。
自分がいない所で誰かが傷つくのではないか、そばにいれば救えたかもしれないのに自分がその場にいなかったせいで命を奪われているのではないか……と不安で押しつぶされそうだったのだ。
「君は……本当に俺の気持ちを揺さぶる」
その言葉が紡がれ終わると同時に、木刀が弾き飛ばされる甲高い音が辺りに鳴り響いた。
更紗の木刀が宙を舞い地面へ転がる頃、杏寿郎の首元へ腕を回し離れたくないと言わんばかりに必死に縋り付く。
そんな更紗の体を杏寿郎はしっかりと受け止めた。
「参りました……でも、そばで共に闘わせてください」
「あぁ、もちろんだ」
初めて奥義を放ち合った2人の勝敗は、杏寿郎の勝利という形で終わりを迎えた。